(4) 自衛権と武装権
家族を守るということ(国を守るということは家族を守ること)
ウヨクがいつも言うのは、「家族が襲われたら命がけで守る」ということです。
この決心に反対する人はいないと思います。
つまり人間はだれでも当然のこととして、自衛の権利を持っているということです。
ウヨクはこのことから、国も同様に自衛権があると結び付けたいようですが、それも当然のこととして、私も認めることができます。
私が非武装を主張するとそれをすぐ無抵抗主義のことだと思うようですが、このような意味では私は無抵抗主義ではありません。
自分を守るために誰でも戦う権利は持っていると私も認めています。
しかし自衛権があるから抵抗することは認める、と言っても武装の必要性を認めることには繋がりません。
武装しなければ自衛できない、とは言えないからです。
その例として、日本では誰もピストルを持っていません。
ピストルを持たなくても、家族を守ることは出来ると考えられるからです。
アメリカ人はそれは理想論だと笑うでしょう。彼等は武器が無ければ自分の権利を守ることは出来ないと考えています。
その考えを間違いということは出来ないし、アメリカの銃社会を日本人が変えることなど出来るはずがありません。
しかし日本からアメリカの銃社会を見ていると、日本は決してあんな風にはなりたくない、と思います。
国防について
国防も同じことが言えます。
武器が無くとも国を守ることは出来るのに、アメリカという国は必要以上の武器を持って、世界中を荒らしまわっています。
日本はそんな国をまねる必要はありません。
武器が無ければ自分を守れない、という考えはアメリカ人、西洋人、国際社会の常識ではありますが、決してそれだけが正しい考えではありません。
日本のように個人が武器を持たないからこそ、平和な国が作れるという良い例があります。
日本国の武装を叫ぶウヨクも、自分自身はピストルを持っていないのが日本という国です。
日本国内のような平和な環境ならば武器の携行は必要ない、という感覚を、アジアのような平和な環境ならば軍隊はいらない、という論理に置き換えるわけです。
中東やバルカンのような火薬庫のような環境ならば、非武装は非現実的かもしれませんが、アジアの環境では、軍備などは必要ないと思えないでしょうか?
「安全」ということに、「100%確実」ということはあり得ません。
いくら治安の良い日本でも、我々の家族が襲われない保証はありません。
こういう危険度はそんなに高くないと見込んで、我々は拳銃を持たなくとも安心していられます。
国と国との関係も同じことで、ある程度確率の低い危機には、大袈裟に備える必要はありません。
危機管理ということは「万一」ということを冷静に計量して備えることで、危機を過大に考えすぎないことが重要です。
ところがウヨクの安全保障というのは「万一」だらけで、客観性が全く見えない状態です。
日本の現在程度の環境ならば、軍備を持たないほうが安全です。
それにアメリカの治安が悪いのは、銃社会が一因で、アメリカでも何とか銃を規制したい人が増えています。
銃社会を克服することで、治安の快復を図ろうと努力している最中です。
国際社会も同様で、軍備を持たない国が多くなれば、それだけ戦争が少なくなるに違いありません。
このように考えると、日本は非武装でやって行くのがベストです。
武装権について
日本人には個人として武装したいという権利意識が全く無いのが実情です。
ところが、西洋人にとっては、個人の武装は譲ることの出来ない権利なのです。
アメリカ憲法では
「規律ある民兵は自由な国家の安全に取って必要であるから、人民が武器を保蔵し、または武装する権利は、これを損なうことが出来ない。」
と国防のために、人民の武装する権利を認めています。
個人の武装は国防に結び付けて必要と考えられるのがアメリカの常識です。
国防のことに熱心な日本人も、自分自身の武装の自覚までに至っていないという意味で中途半端なものです。
日本では秀吉の刀狩以来農民は武器を持たないのが常識でした。
(注;最近の刀狩についての藤木久志氏の著書には、武器の召し上げではなく、自ら封印したのだと書いてありますが・・・。)
明治の廃刀令で武士も武装解除されました。
西洋ではこんなことは絶対に考えられません。
フランス革命は武器を持った市民によって起こされたものですが、明治維新では武器を持たない農民には無関係に進みました。
だから流血の度合いが全く違うものになりました。
西洋人にとって個人の武装を禁止するなどということは考えることも出来ません。
その例をヨーロッパの憲法の「集会の自由」の項目で見ることが出来ます。
その一例として、ドイツ憲法(1949年)8条に
「全てのドイツ人は、・・・武器を携帯しないで集会する権利を有する。」
とあります。
つまり「武器を保有していることは当然」という前提で書かれていることが解ります。
武器保有の権利を書く必要性さえ感じていないのが西洋です。
刀狩以来の日本の伝統を、「だから従順な国民性になった。」と軽蔑的に見る人がいますが、それは西洋思想に蝕まれた、哀れな人です。
しかしそういう西洋の伝統にも関わらず、世界の国々では治安の改善のために個人の武装を禁止する方向に動いているという現実もあります。
日本がこの点で先進国に当たるといえます。
アメリカ憲法で見たように、国の軍隊は、個人の武装の延長上にあるものです。
個人の武装が国防の基本であって、それを強化するものとして軍隊があります。
自分や家族の命を守るために個人は武装し、それを確実にするために、つまり家族を守るために軍隊を持つ、というのが西洋の軍隊です。
だから個人が武装していないのに、国が軍隊を持つというのは、論理が逆転しています。
日本においては、個人が武装する必要を感じないのですから、国も軍隊をもつ必要が無い、と考えるのが筋です。
以上で言いたいのは、日本は自衛について特異な国民性があるということです。
戦争、平和、自衛、軍備、自衛などについて、日本は世界の中では特異な感覚を持っている、ということを自覚して、日本にふさわしいあり方で世界平和に貢献すべきだということです。
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